訪問看護の医療保険と介護保険の使い分け 別表7・特別指示書・精神科の判断フロー

訪問看護がどちらの保険から給付されるかは、まず要介護・要支援認定の有無で分かれます。認定を受けていなければ医療保険、受けていれば原則として介護保険です。ただし、要介護・要支援認定を受けている人でも、①別表第7に掲げる疾病等に該当する、②特別訪問看護指示書の交付を受けた期間、③認知症以外の精神疾患で精神科訪問看護の対象となる、のいずれかに当てはまる場合は医療保険からの給付になります。 この振り分けを誤ると、請求先そのものを間違えることになり、返戻・過誤調整の原因になります。この記事では、判断フローと、請求誤りが起きやすい場面を整理します。
この記事でわかること
- 使い分けの起点は要介護・要支援認定の有無で、認定があれば介護保険が原則です
- 認定があっても医療保険になるのは、**別表第7の疾病等・特別訪問看護指示書の期間・精神科訪問看護(認知症以外)**の3ルートです
- 別表第7は20の疾病等の限定列挙で、パーキンソン病には重症度の限定条件があります
- 請求誤りが起きやすいのは、特別指示期間の切り替え忘れとパーキンソン病の該当判定です
判断フロー:2段階で確認する
第1段階:要介護・要支援認定を受けているか
受けていなければ、医療保険の訪問看護(訪問看護療養費)です。40歳未満の人や、40歳以上で認定を受けていない人がここに入ります。
第2段階:認定を受けている場合、医療保険になる3ルートに該当するか
介護保険の給付は医療保険の給付に優先するのが原則で、要介護・要支援の認定を受けている人の訪問看護は介護保険(訪問看護費)から給付されます。ただし、次の3つのいずれかに該当する場合は、医療保険からの給付になります。
| ルート | 内容 | 期間 |
|---|---|---|
| ① 別表第7 | 末期の悪性腫瘍、ALSなど別表第7に掲げる疾病等に該当する | 該当している間 |
| ② 特別指示 | 特別訪問看護指示書の交付を受けた | 交付日から14日以内の期間 |
| ③ 精神科 | 認知症以外の精神疾患で精神科訪問看護の対象となる | 精神科訪問看護として提供する間 |
なお、医療保険の訪問看護は原則週3日以内という日数の考え方があるのに対し、介護保険はケアプラン(区分支給限度基準額)の範囲で組み立てる、という報酬構造の違いもあります。保険の振り分けは単なる請求先の違いではなく、提供できる訪問の組み方にも影響します。
別表第7:20の疾病等の限定列挙
別表第7(特掲診療料の施設基準等・別表第七)に掲げる疾病等は、次の20項目です。
末期の悪性腫瘍/多発性硬化症/重症筋無力症/スモン/筋萎縮性側索硬化症/脊髄小脳変性症/ハンチントン病/進行性筋ジストロフィー症/パーキンソン病関連疾患(進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、およびパーキンソン病〔ホーエン・ヤールの重症度分類ステージ3以上かつ生活機能障害度Ⅱ度またはⅢ度のものに限る〕)/多系統萎縮症(線条体黒質変性症、オリーブ橋小脳萎縮症、シャイ・ドレーガー症候群)/プリオン病/亜急性硬化性全脳炎/ライソゾーム病/副腎白質ジストロフィー/脊髄性筋萎縮症/球脊髄性筋萎縮症/慢性炎症性脱髄性多発神経炎/後天性免疫不全症候群/頸髄損傷/人工呼吸器を使用している状態の者
別表第7に該当する利用者は、医療保険の給付となるだけでなく、訪問看護基本療養費を週4日以上算定できる扱いになります。
なお、名前が似ている「別表第8」は役割が違います。別表第8は、気管カニューレや留置カテーテルの使用、在宅酸素療法指導管理を受けている状態、真皮を越える褥瘡など、処置・管理の状態で定義されるリストで、週4日以上の算定などに関わりますが、別表第8への該当だけでは保険の振り分けは変わりません。「別表第7=保険が変わる」「別表第8=状態による算定上の扱い」と分けて覚えてください。
特別指示・精神科ルートの注意点
② 特別訪問看護指示書のルートは、急性増悪などで主治医が一時的に頻回の訪問看護の必要を認めた場合です。介護保険で訪問看護を利用している人でも、交付日から14日以内の特別指示期間の訪問看護は医療保険からの給付に変わり、期間が終われば介護保険に戻ります。この「切り替えと戻し」が月をまたぐと、請求誤りが起きやすくなります。交付要件・期間・月2回交付の例外は特別訪問看護指示書とはで詳しく解説しています。
③ 精神科のルートは、認知症以外の精神疾患で、精神科を担当する医師の精神科訪問看護指示書にもとづき精神科訪問看護を提供する場合です。逆に言えば、認知症の利用者はこのルートに乗りません。要介護認定を受けている認知症の利用者の訪問看護は、別表第7や特別指示に該当しない限り介護保険です。
請求誤りが起きやすい場面
- パーキンソン病の該当判定。病名がパーキンソン病でも、ホーエン・ヤール分類ステージ3以上かつ生活機能障害度Ⅱ度またはⅢ度でなければ別表第7に該当しません。重症度の根拠(主治医の指示書・診療情報)を確認せずに医療保険で請求するのは危険です。逆に、該当するのに介護保険で請求し続けるケースもあります
- 特別指示期間の戻し忘れ。14日の期間終了後も医療保険で請求を続けてしまう、または期間中の訪問を介護保険で請求してしまう誤りです。期間の開始日・終了日をレセプト担当と共有してください
- 「末期の悪性腫瘍」の該当時期。がんの診断だけでは該当せず、「末期」であることが前提です。主治医の判断・指示書の記載と整合させてください
- 状態変化時の見直し漏れ。人工呼吸器の使用開始・中止など、別表第7への該当・非該当は途中で変わります。該当状況を定期的に見直す運用が必要です
判断に迷うケース、とくに給付調整の細かい取扱い(同一月内の切り替え、他サービスとの関係など)は、厚生労働省の給付調整通知が正本です。個別の判断は管轄の地方厚生(支)局および保険者にご確認ください。
まず確認したいこと
- 利用者ごとに、要介護・要支援認定の有無と保険の振り分け根拠(別表第7/特別指示/精神科)を台帳で管理しているか
- パーキンソン病の利用者について、重症度分類・生活機能障害度の根拠を指示書等で確認しているか
- 特別指示期間の開始日・終了日が、訪問予定とレセプトの両方に反映される運用になっているか
- 人工呼吸器の使用開始など、状態変化で振り分けが変わったときに見直すトリガーが決まっているか
- 迷ったときの確認先(管轄の地方厚生(支)局・保険者)と確認手順が決まっているか
出典
| 資料 | 発信元 | 文書・掲載日 | 確認日 |
|---|---|---|---|
| よくある質問(訪問看護療養費の算定について)令和8年6月1日〜適用分 | 近畿厚生局 | — | 2026-08-14 |
| 訪問看護(参考資料)社保審-介護給付費分科会 第142回 参考資料2 | 厚生労働省 | 2017-07-05 | 2026-08-14 |
※別表第7・別表第8の一覧は、令和8年6月1日適用分の近畿厚生局Q&Aの記載にもとづいています。使い分けの構造図は2017年の厚生労働省資料を参照していますが、給付調整の枠組み(介護保険優先・3つの医療保険ルート)は現行も同様です。給付調整の詳細な取扱いは最新の給付調整通知が優先します。個別の請求判断は管轄の地方厚生(支)局・保険者にご確認ください。
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執筆
クラシテク編集部
訪問看護の制度・加算・現場実務について、厚生労働省および地方厚生(支)局の一次資料にもとづいて解説しています。記事内の数値・要件は掲載時点のものです。個別の適用判断は管轄の地方厚生(支)局にご確認ください。
