訪問看護ベースアップ評価料とは【医療保険】ⅠとⅡの違いと届出の流れ

訪問看護ベースアップ評価料は、看護職員等の賃上げの原資を診療報酬側で手当てするために設けられた、医療保険の評価料です。(Ⅰ)は利用者1人につき月1回1,050円(継続して賃上げに取り組んできたステーションは1,830円)、(Ⅱ)は(Ⅰ)だけでは賃上げ原資が足りないステーションが上乗せする区分制の評価料です。算定した額は職員の賃金改善に充てることが前提で、届出時の計画と毎年の報告がセットになっています。この記事では制度の骨格と届出の流れを整理します。
この記事でわかること
- ベースアップ評価料は賃上げの原資を作るための評価料で、算定額は職員の賃金改善に充てることが前提です
- (Ⅰ)は利用者1人につき月1回1,050円、継続した賃上げの取組を実施したステーションは1,830円です
- (Ⅱ)は(Ⅰ)を算定している利用者に対する上乗せの区分制(30円〜1,080円・36区分。一部区分は令和9年6月以降)です
- 令和9年6月以降は(Ⅰ)の額が引き上がる設計が告示に書き込まれています
- 届出は賃金改善の計画を作ってから。算定後は毎年8月の報告が続きます
なぜ「評価料」で賃上げなのか
訪問看護ステーションの収入は診療報酬・介護報酬で決まっているため、物価や他産業の賃金が上がっても、自力で価格を変えて原資を作ることができません。そこで、職員の賃金改善を行う体制のあるステーションに対し、利用者1人あたり月単位の評価料として賃上げの原資を上乗せする仕組みが作られました。
重要なのは、これは「もらえる加算」ではなく**「賃金に流すことを約束して受け取るお金」**だという点です。届出時に賃金改善の計画を出し、算定後は実績を毎年報告します。取りっぱなしにできない設計です。
(Ⅰ)の仕組み — 利用者1人につき月1回
告示(訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法)では、訪問看護ベースアップ評価料(Ⅰ)は1,050円とされ、届出をしたステーションが職員の賃金の改善を図る体制にある場合に、訪問看護管理療養費(区分番号02の1)または包括型訪問看護療養費(区分番号04)を算定している利用者1人につき、月1回算定します。
さらに、継続して賃上げに係る取組を実施したステーションは、所定額に代えて1,830円を算定するとされています。また告示には、令和9年6月以降は(Ⅰ)を所定額の100分の200に相当する額(計算上2,100円)で算定し、継続した取組を実施したステーションは2,880円とする段階的な引き上げも書き込まれています。
自ステーションがどの額に当てはまるか(「継続して賃上げに係る取組を実施した」に該当するか)は、施設基準の要件に関わるため、届出前に管轄の地方厚生(支)局に確認してください。
(Ⅱ)の仕組み — (Ⅰ)で足りない分の上乗せ
(Ⅱ)は、(Ⅰ)を算定している利用者1人につき月1回、基準に係る区分に従って算定する上乗せの評価料です。告示では(Ⅱ)1から(Ⅱ)36までの区分があり、額は30円から1,080円まで30円刻みです(うち(Ⅱ)19〜36は令和9年6月以降に算定する区分とされています)。継続した賃上げの取組を実施したステーション向けには、別の額の表も定められています。
どの区分になるかは、自ステーションの収入規模と対象職員の給与総額から計算して届け出る仕組みです。計算方法と様式は届出先の案内に従ってください。ここで押さえておくべきは構造だけです。(Ⅰ)は全員一律の土台、(Ⅱ)は(Ⅰ)だけでは賃上げ原資が不足するステーションのための調整弁、という2階建てになっています。
賃金改善計画書の作り方と届出の流れ
届出のおおまかな流れは次のとおりです。
- 対象職員と賃上げの中身を決める: 算定見込み額を、どの職員の、どの賃金項目に配分するかを決めます。基本給など毎月支払われる給与の引き上げを基本とする取り扱いとされているため、一時金だけで消化する設計にしないよう注意してください
- 賃金改善計画書を作る: 決めた配分を所定の様式に落とします。様式は年度で更新されるため、必ず管轄の地方厚生(支)局のページから最新版を取得します
- 施設基準の届出を行う: 訪問看護ステーションの所在地を管轄する地方厚生(支)局へ届け出ます。提出方法(専用メールアドレスへのExcel提出など)と受理・算定開始のタイミングは管轄局の案内で確認してください
- 算定を開始し、賃金改善を実行する: 計画どおりに賃金へ反映します
- 毎年8月に報告する: 前年度分の賃金改善実績報告書と、当年度分の中間報告を提出します
5の毎年の報告は、この評価料を算定し続けるうえでの前提になる手続きです。今年度の提出期限と様式のつまずきどころは、ベースアップ評価料の報告書の記事で扱っています。制度を理解して届け出るのがこの記事、毎年8月の報告を落とさないのがあちらの記事、という役割分担です。
まず確認したいこと
- 自ステーションはベースアップ評価料(Ⅰ)を届け出ているか
- (Ⅰ)だけで賃上げ原資が足りているか。不足するなら(Ⅱ)の届出を検討したか
- 「継続して賃上げに係る取組を実施した」場合の額(1,830円)に該当するか、管轄局に確認したか
- 賃金改善計画書の配分が、毎月支払われる給与の引き上げ中心になっているか
- 令和9年6月の額の引き上げを、来年度の資金計画・賃金計画に織り込んだか
- 毎年8月の実績報告・中間報告の担当と段取りが決まっているか
出典
| 資料 | 発信元 | 文書・掲載日 | 確認日 |
|---|---|---|---|
| 訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法(平成20年厚生労働省告示第67号)区分番号07 | 厚生労働省 | 平成20年3月5日(最終改正反映版) | 2026-08-14 |
| 訪問看護ステーションの基準に関する届出について(令和8年度診療報酬改定) | 厚生労働省九州厚生局 | — | 2026-08-14 |
| ベースアップ評価料に係る実績報告について | 厚生労働省九州厚生局 | 2026-08-07 掲載 | 2026-08-14 |
※金額・区分・要件は上記時点の情報です。実際の届出可否・様式・提出期限は最新の告示・通知と、管轄の地方厚生(支)局の案内が優先します。個別の判断は管轄の地方厚生(支)局にご確認ください。
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執筆
クラシテク編集部
訪問看護の制度・加算・現場実務について、厚生労働省および地方厚生(支)局の一次資料にもとづいて解説しています。記事内の数値・要件は掲載時点のものです。個別の適用判断は管轄の地方厚生(支)局にご確認ください。
