疑義解釈その8で訪問看護は何が示されたか 紹介料禁止と緊急訪問看護加算の確認点

令和8年度診療報酬改定について、厚生労働省保険局医療課は2026年(令和8年)6月17日に「疑義解釈資料の送付について(その8)」を発出しました。訪問看護療養費関係では、利用者紹介の対価として紹介料等を支払うことの禁止(いわゆる紹介料禁止)の判断基準と、包括型訪問看護療養費における緊急訪問看護加算・精神科緊急訪問看護加算の算定場面が示されています。 さらに2日後の6月19日には、改定関連通知と官報掲載事項の一部訂正の事務連絡が出ており、訂正対象には訪問看護ステーションの届出手続き通知(様式を含む)が含まれます。この記事では、6月に出たこの2本のうち、訪問看護の算定・記録・届出に影響する部分を整理します。
この記事でわかること
- 疑義解釈その8(2026年6月17日)の別添2は訪問看護療養費関係の問1〜問4です
- 問1〜問3は、利用者紹介の対価として経済上の利益を提供することの禁止の趣旨と判断基準を示しています
- 問4は、包括型訪問看護療養費を算定する利用者への緊急訪問看護加算・精神科緊急訪問看護加算が、限定的な場面でしか算定できないことを示しています
- 2026年6月19日の訂正事務連絡では、訪問看護ステーションの届出手続き通知(保医発0305第9号)の訂正が行われており、届出様式は最新版を使う必要があります
6月に出た2本の文書の位置づけ
令和8年度診療報酬改定は、2026年3月5日付の留意事項通知(保医発0305第6号)等にもとづき、6月1日から実施されています。その直後の6月17日に疑義解釈その8、6月19日に訂正事務連絡が発出されました。
改定本体の通知を3月に読み込んで運用を組んだステーションほど、「その後の疑義解釈と訂正」を取りこぼしやすくなります。疑義解釈は通知の解釈を確定させる文書であり、請求・記録の実務に直接影響するため、発出のたびに訪問看護関係の有無を確認する運用をおすすめします。
紹介料禁止:問1〜問3で示された判断基準
改正後の「指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準」では、訪問看護ステーションが、他の事業者やその従業員に対して、利用者を紹介する対価として金品その他の経済上の利益を提供し、自らのステーションで指定訪問看護を受けるよう誘引することが禁止されました。疑義解釈その8の問1〜問3は、この禁止の趣旨と判断基準を具体化しています。
判断は2段階です(問2)。
- 他の事業者またはその従業員に対して、経済上の利益の提供を行っていること
- それを利用者紹介の対価として行い、利用者が自らのステーションで指定訪問看護を受けるよう誘引していること
この両方に該当する場合、禁止行為に該当すると判断されます。実務上、注意したいポイントは次のとおりです。
- 「経済上の利益」は金銭に限りません。物品・便益・労務・饗応のほか、商品や労務を通常価格より安く購入できる利益も含まれます
- 契約書上の名目は問われません。広報業務や車の運転業務などの委託料・貸借料に紹介対価が上乗せされていると判断される場合も対象です。委託料が地域の相場より高くないこと、社会通念上合理的な計算根拠があることを示せる必要があります
- 委託料・貸借料が訪問看護療養費の一定割合や利用者数に応じて設定されている場合は、実質的に紹介対価と考えられる、または合理的根拠の説明が必要とされています
- 紹介の対象は集合住宅・施設の入居者に限らず、戸建住宅の居住者も含まれます
また問3では、高齢者向け住まいの入居要件として併設ステーションの利用を求め、入居者の個別の状況や必要性を踏まえずに訪問看護を行うことは「あってはならない」と明確に否定されています。
高齢者住まいや紹介事業者と業務委託・賃貸借の契約があるステーションは、契約書と実際の支払い根拠を一度点検し、説明できる状態にしておくことが現実的な対応です。個別のケースが該当するかどうかの判断は、管轄の地方厚生(支)局にご確認ください。
緊急訪問看護加算:問4で示された算定場面の限定
問4は、包括型訪問看護療養費を算定する利用者に対する緊急訪問看護加算・精神科緊急訪問看護加算の考え方を示しています。要点は次の2つです。
- 加算は、利用者・家族等の緊急の求めに応じるだけでなく、主治医の指示により算定要件を満たす緊急の指定訪問看護を行った場合に算定できる
- 包括型訪問看護療養費は随時対応による訪問看護も含んだ評価であるため、この加算の算定は「特に予見が困難で重篤な症状の出現等のため、緊急に主治医の明示の指示により通常とは著しく異なる対応を必要とした場合」に限られる。同日に多数の利用者へ算定したり、同一利用者に連日算定したりすることは想定されないと明記された
包括型を算定しているステーションで、緊急加算を日常的に算定してきた場合は、算定根拠(主治医の明示の指示、緊急性の記録)を残せているかを見直す必要があります。記録が説明できない算定は、指導・監査の場面で問題になり得ます。
6月19日の訂正事務連絡:届出様式は最新版で
2026年6月19日付の「令和8年度診療報酬改定関連通知及び官報掲載事項の一部訂正について」(保険局医療課事務連絡)では、3月5日付の各通知の訂正が行われました。訂正対象には「訪問看護ステーションの基準に係る届出に関する手続きの取扱いについて」(保医発0305第9号)が含まれ、訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)の届出書・誓約書(別紙様式11)などの様式も収載されています。
実務への影響はシンプルで、これから届出を行う場合は、3月時点で保存した様式を使い回さず、訂正後の最新様式を取り直すことに尽きます。どの箇所がどう訂正されたかの詳細は、訂正事務連絡の本文と、管轄の地方厚生(支)局の案内でご確認ください。
なお、疑義解釈はその8のあとも続いており、7月30日には疑義解釈その11とあわせて、ベースアップ評価料の賃金改善実績報告書に関する訂正も出ています。8月末が期限の実績報告については訪問看護ベースアップ評価料の報告書、提出はお済みですかで解説しています。
まず確認したいこと
- 紹介事業者・高齢者住まい等との業務委託・賃貸借の契約内容と支払い根拠を点検したか
- 委託料・貸借料が療養費の一定割合や利用者数連動になっていないか確認したか
- 包括型算定の利用者への緊急訪問看護加算について、主治医の明示の指示と緊急性の記録が残る運用になっているか
- 6月19日訂正後の最新様式で届出書類を準備しているか
- 疑義解釈・訂正事務連絡の発出を定期的に確認する担当と頻度を決めてあるか
出典
| 資料 | 発信元 | 文書・掲載日 | 確認日 |
|---|---|---|---|
| 疑義解釈資料の送付について(その8) | 厚生労働省保険局医療課 | 2026-06-17 | 2026-08-14 |
| 令和8年度診療報酬改定関連通知及び官報掲載事項の一部訂正について | 厚生労働省保険局医療課 | 2026-06-19 | 2026-08-14 |
| 令和8年度診療報酬改定まとめ | 全国訪問看護事業協会 | 随時更新 | 2026-08-14 |
※本記事は上記時点の公表内容にもとづきます。個別の算定可否・届出の取扱いは、疑義解釈本文と管轄の地方厚生(支)局の案内が優先します。判断に迷う場合は管轄局にご確認ください。
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執筆
クラシテク編集部
訪問看護の制度・加算・現場実務について、厚生労働省および地方厚生(支)局の一次資料にもとづいて解説しています。記事内の数値・要件は掲載時点のものです。個別の適用判断は管轄の地方厚生(支)局にご確認ください。
