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令和9年度介護報酬改定へ、訪問看護3団体が要望書を提出 論点を先読みする

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令和9年度(2027年度)介護報酬改定に向けて、日本看護協会・日本訪問看護財団・全国訪問看護事業協会が、2026年(令和8年)7月13日に厚生労働省老健局長へ要望書を提出しました。柱は「すべての訪問看護師の処遇改善」と「事業所の安定運営を支える介護報酬の確保」の2点です。 同じ日には、日本訪問看護財団・全国訪問看護事業協会の2団体連名でも、在宅療養支援体制の強化や中山間・人口減少地域の提供体制などを求める要望書が出ています。要望書は「業界が次の改定で何を勝ち取りに行くか」の意思表示であり、改定論議の入口を先読みする材料になります。この記事では、2通の要望書の中身と、そこから見える論点を整理します。

この記事でわかること

  • 2026年7月13日に、訪問看護関連団体から2通の要望書が厚生労働省老健局長へ提出されました
  • 3団体連名の要望書は、訪問看護師の処遇改善介護報酬による経営基盤の確保の2点を求めています
  • 2団体連名の要望書は、複合ニーズ対応・入退院時の連携・中山間地域の提供体制の3点を求めています
  • 要望の背景として、**赤字事業所38.2%(令和6年度決算)**などの数値が示されています
  • 要望はあくまで業界側の意見であり、改定に反映されるかはこれからの審議次第です

誰が、何を要望したのか

今回提出されたのは、次の2通です。いずれも2026年7月13日付で、宛先は厚生労働省老健局長です。

令和9年度介護報酬改定に向けて提出された2通の要望書の構造

要望書 提出団体 要望項目
処遇・経営 日本看護協会、日本訪問看護財団、全国訪問看護事業協会(3団体) ①すべての訪問看護師の処遇改善 ②訪問看護事業所の安定的な運営を支える介護報酬の確保
提供体制 日本訪問看護財団、全国訪問看護事業協会(2団体) ①介護と医療の複合ニーズを抱える者の在宅療養支援体制の更なる強化 ②高齢者の急な入退院・入退所等に対応できる医療介護連携体制の強化 ③中山間・人口減少地域においても持続可能な訪問看護提供体制の確立

処遇改善の要望:背景にある数値

3団体要望書は、処遇改善を求める根拠として次のような数値を挙げています。

要望書が根拠として挙げる訪問看護の経営・人材の数値

  • 訪問看護事業所の38.2%が赤字(令和6年度決算。令和7年度介護事業経営概況調査にもとづく記載)で、全サービス平均を上回る
  • 訪問看護の収支差率は10.3%(令和6年度決算)で、前年度から1.6ポイント減少
  • 訪問看護ステーションの求人倍率は4.54倍(令和6年度)で、病院や介護施設など他の施設種類と比較して最も高い

要望書は、令和8年度介護報酬改定で介護職員等処遇改善加算の対象に訪問看護ステーション等が新たに含まれた一方、他産業と医療・福祉分野の給与差は拡大しており、人材流出が強く懸念されると述べています。そのうえで、他産業と遜色ない賃金引上げが可能となる処遇改善と、その原資を事業所が確保できる報酬水準を求めています。ここまでが要望書に書かれている「事実」です。

処遇改善加算については、令和8年度改定での新設時の要件と届出を訪問看護に処遇改善加算が新設で解説しています。

提供体制の要望:3つの柱

2団体連名の要望書の柱は3つです。

1. 介護と医療の複合ニーズを抱える者の在宅療養支援体制の更なる強化

医療依存度が高い利用者や、介護と医療の両方を必要とする利用者を在宅で支える体制の強化を求めるものです。

2. 高齢者の急な入退院・入退所等に対応できる医療介護連携体制の強化

急な状態変化にともなう入退院・入退所の場面で、訪問看護が医療と介護をつなぐ役割を果たせる連携体制の強化を求めるものです。

3. 中山間・人口減少地域においても持続可能な訪問看護提供体制の確立

移動距離が長く利用者が分散する地域でも、訪問看護の提供が事業として成り立つ体制の確立を求めるものです。

各項目の下にどのような具体的要望(加算の新設・要件の見直しなど)がぶら下がっているかは、本記事の確認時点では要望書本文(全国訪問看護事業協会サイト掲載のPDF)でご確認ください。

ここから先は「推測」:改定論点になり得るもの

以下は要望書に書かれた事実ではなく、要望内容から見た筆者の推測です。実際に論点化するかは、今後の社会保障審議会介護給付費分科会などの審議を待つ必要があります。

  • 処遇改善は、令和8年度改定で処遇改善加算の対象が広がった直後のテーマであるため、加算率や要件の再調整が論点になる可能性があります
  • 中山間・人口減少地域は、訪問看護に限らず介護保険制度全体で継続して議論されてきた領域であり、地域差を踏まえた評価のあり方が論点になる可能性があります
  • 入退院時の連携は、医療保険側(診療報酬)との役割分担にまたがるため、介護報酬単独では決まらない調整領域になるとみられます

繰り返しになりますが、要望書の提出は改定プロセスの入口です。現時点で「令和9年度改定でこうなる」と言える段階ではありません。

いま現場ができること

改定の中身が固まるのは先ですが、要望の方向性からは、次の準備が無駄になりにくいと考えられます。

  • 処遇改善関連の加算(処遇改善加算・ベースアップ評価料など)の算定状況と賃金改善の記録を整理しておく
  • 自事業所の収支差率・給与費割合を把握し、要望書が引く全国値(収支差率10.3%など)と比べてみる
  • 入退院時の連携で自事業所が担っている業務(情報提供・カンファレンス参加など)を棚卸ししておく
  • 改定論議の本格化に備えて、介護給付費分科会の資料公表を追う体制(担当・頻度)を決める

出典

資料 発信元 文書・掲載日 確認日
「令和9年度介護報酬改定に関する要望書」を提出(3団体) 全国訪問看護事業協会 2026-07-13 提出 2026-08-14
3団体要望書 本文(PDF) 日本看護協会・日本訪問看護財団・全国訪問看護事業協会 2026-07-13 2026-08-14
「令和9年度介護報酬改定に関する要望書」を提出(2団体) 全国訪問看護事業協会 2026-07-13 提出 2026-08-14
2団体要望書 本文(PDF) 日本訪問看護財団・全国訪問看護事業協会 2026-07-13 2026-08-14

※本記事の数値は要望書に記載されたものです。元となった各調査の最新値・詳細は、それぞれの公表資料をご確認ください。改定内容は今後の審議で決まるため、本記事の「推測」部分を前提にした経営判断は避けてください。

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執筆

クラシテク編集部

訪問看護の制度・加算・現場実務について、厚生労働省および地方厚生(支)局の一次資料にもとづいて解説しています。記事内の数値・要件は掲載時点のものです。個別の適用判断は管轄の地方厚生(支)局にご確認ください。