訪問看護にも処遇改善加算がつきました。まだ出していないステーションが、いまからできること

これまで介護保険の処遇改善加算は、訪問介護などが対象で、訪問看護は対象外でした。「うちには関係ない」という前提で何年もやってきたステーションがほとんどだと思います。 その前提が、令和8年6月1日から変わりました。訪問看護と介護予防訪問看護も、処遇改善加算の対象になっています。 施行から2か月以上たちましたが、「まだ対象外だと思っていて、届出を出していない」というステーションは少なくありません。もし心当たりがあっても、まだ間に合います。しかも、思っているよりハードルは低いはずです。
この記事でわかること
- 訪問看護・介護予防訪問看護が、令和8年6月1日から処遇改善加算の対象になりました
- 訪問看護の加算率は**1.8%**です(介護予防訪問看護も同じ)
- 条件を満たす方法は2つあります。どちらか片方でかまいません
- どちらの方法も、申請の時点では「これから対応します」という誓約で算定できます
- 届出は「算定を始めたい月の2か月前の月末まで」が基本です
何が変わったのか
今回の改定は、本来の改定時期(令和9年度)を待たずに前倒しで行われたものです。
内容は大きく3つあり、そのうちの1つが「これまで処遇改善加算の対象外だった訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅介護支援等に、処遇改善加算を新設する」というものでした。
新しく対象になったサービスの加算率は、次のとおりです。
| サービス区分 | 加算率 |
|---|---|
| 訪問看護 | 1.8% |
| 訪問リハビリテーション | 1.5% |
| 居宅介護支援・介護予防支援 | 2.1% |
訪問看護には「★」がついており、介護予防についても同じ措置がとられます。
加算率は、処遇改善加算を除いた加減算後の総報酬単位数に対して掛かります。率そのものは、サービスごとの常勤換算の職員数にもとづいて設定されたものです。
条件を満たす方法は2つあります
新しく対象になった訪問看護等は、次のどちらかを満たせば算定できます。
方法A:加算Ⅳに準ずる条件
キャリアパス要件Ⅰ・Ⅱと、職場環境等要件を満たす方法です。
キャリアパス要件Ⅰ・Ⅱは、賃金体系などの整備と、研修の実施が中身になります。就業規則や賃金規程の見直しから始まることが多く、事務が兼務のステーションだと時間がかかります。社労士さんにお願いすることになるケースも多いはずです。
方法B:令和8年度だけの特例
令和8年度に限った特例で、次のア〜ウのいずれかを満たす方法です。
- ア) 訪問・通所サービス等 → ケアプランデータ連携システムに加入し、実績の報告を行う
- イ) 施設サービス等 → 生産性向上推進体制加算Ⅰまたは Ⅱ を取得し、実績の報告を行う
- ウ) 社会福祉連携推進法人に所属していること
訪問看護に関係してくるのは、主にアとウです。とくにアは、規程の見直しより先に手がつけられるステーションが多いのではないでしょうか。
いちばん大事なのは「誓約でも算定できる」ことです
ここが今回の制度でいちばん見落とされやすく、そして効いてくる点です。
厚生労働省の資料には、事務負担への配慮として次のように書かれています。
- 方法Aについて — 加算Ⅳに準ずる要件は、加算の申請時点では、令和8年度中に対応するという誓約で算定できる
- 方法Bについて — 特例要件も、加算の申請時点では、加入または取得の誓約で算定できる
つまり、規程の整備やシステムの加入がまだ終わっていなくても、「令和8年度中にやります」と誓約すれば、申請そのものはできるということです。
「うちはまだ何も整備できていないから無理だ」と思って止まっているのなら、そこは事実と違います。順番は逆で、先に申請して、年度内に整えていくことができます。
もちろん、誓約したことは年度内に実際にやりきる必要があります。そこは前提として押さえておいてください。
いつまでに、何を出すか
出すものは2つあり、どちらも「算定を始めたい月」からの逆算で期限が決まります。
「2か月前の月末まで」ということは、いま準備を始めれば、数か月先の算定開始には十分間に合うということです。6月の時点で出せなかったからといって、これから先も算定できないという話ではありません。
ただし、さかのぼって算定することはできません。動き出しが1か月遅れれば、その分は受け取れなくなります。1.8%という数字は、訪問看護費の規模で考えると決して小さくありません。
なお、同じ法人のなかに訪問介護など、すでに処遇改善加算を算定しているサービスがあるかどうかでも、進め方は変わります。すでに出したことがある法人なら書類の下地がありますが、訪問看護や居宅介護支援だけでやっている事業所は、一からの準備になります。
数字で見ると、どれくらいのステーションが算定を始めているのか
制度の説明だけだと、「で、まわりはどうしているの」という疑問が残ります。ここは公表されている統計がまだ出てこない領域なので、当社が請求代行を通じて把握している範囲の集計を、参考値として共有します。
当社が介護保険の請求を代行している訪問看護事業所のうち、処遇改善加算を算定していたのは、**令和8年6月分の請求で約35%、7月分で約48%**でした。施行から2か月たった時点で、半数以上がまだ算定を始めていないことになります。
算定していない事業所を見ると、法人のなかに他の介護保険サービスを持たず、訪問看護だけで運営している事業所が約7割を占めていました。これまで処遇改善加算に触れる機会がなかったぶん、情報が届きにくかったことがうかがえます。
読み方だけ添えておきます。これは当社がお手伝いしている事業所の集計であり、全国の平均ではありません。当社は訪問看護・病院・介護事業所をあわせて200を超える施設をお手伝いしていて、月におよそ2万枚の書類処理を代行しています(2026年7月時点)。その母集団から出した数字です。
それでも、6月に始まったものが2か月たってどこまで広がっているかを示す数字は、いまほとんど存在しません。参考値としてご覧ください。
算定を始めると、やることが1つ増えます
処遇改善加算は、算定して終わりではありません。受け取った分を実際に職員の賃金にあて、その実績を報告するところまでがセットです。算定を始めるということは、計画・実行・報告という1年のサイクルを1本増やすということでもあります。
そのうえで、賃上げの原資が制度として用意されたこと自体は、採用と定着に効く材料です。求人票に書ける条件が変わりますし、いま働いているスタッフへの説明材料にもなります。
まず確認したいこと
- 自分のステーションは処遇改善加算の届出を出しているか(「対象外」の前提のままになっていないか)
- 方法A(加算Ⅳに準ずる条件)と方法B(令和8年度の特例)の、どちらが自分たちにとって早いか
- いますぐ整備が終わっていなくても、誓約で申請できることを踏まえて判断したか
- 同じ法人のなかに、すでに処遇改善加算を算定している介護保険サービスがあるか
- 算定を始めたい月を決めて、その2か月前の月末から逆算した予定を引いたか
- 都道府県・市町村の案内で、提出先と様式を確認したか
- 請求業務を外部にお願いしている場合、算定を始める月を委託先に伝えたか(伝わっていないと初月の請求に乗りません)
出典
| 資料 | 発信元 | 文書・掲載日 | 確認日 |
|---|---|---|---|
| 介護職員等処遇改善加算の拡充(令和8年度介護報酬改定) | 厚生労働省 | 令和8年度介護報酬改定資料 | 2026-08-13 |
| 介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(老発0313第6号) | 厚生労働省老健局長 | 令和8年3月13日 | 2026-08-13 |
| 介護保険最新情報 Vol.1479 | 厚生労働省老健局老人保健課 | 令和8年3月13日 | 2026-08-13 |
| 令和8年度臨時介護報酬改定(処遇改善加算)について | 公益財団法人 日本訪問看護財団 | 2026-03-13 投稿/2026-04-21 更新 | 2026-08-13 |
| 支援施設数200超・月間書類処理約2万枚、処遇改善加算の算定状況 | 株式会社クラシテク調べ | 2026-07 時点 | 2026-08-13 |
※加算率・条件・期限は上記時点の情報です。実際に出せるかどうかと具体的な手続きは、厚生労働省の告示と、都道府県・市町村の案内が優先します。個別の判断は都道府県・市町村にご確認ください。
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執筆
クラシテク編集部
訪問看護の制度・加算・現場実務について、厚生労働省および地方厚生(支)局の一次資料にもとづいて解説しています。記事内の数値・要件は掲載時点のものです。個別の適用判断は管轄の地方厚生(支)局にご確認ください。
