高齢者虐待防止措置未実施減算とは【訪問看護】4要件と年間の回し方

高齢者虐待防止措置未実施減算は、虐待の発生・再発を防止するための措置(委員会の開催・指針の整備・研修の実施・担当者の配置)が講じられていない場合に、基本報酬から所定単位数の1%を減算する仕組みです。令和6年度介護報酬改定で新設され、訪問看護には経過措置がないため、すでに適用されています。4つの要件はどれも書類と記録で示せるものなので、この記事では要件の説明に加えて、減算を受けないための年間の回し方まで書きます。
この記事でわかること
- 減算幅は所定単位数の100分の1です(介護保険の訪問看護を含むほぼ全サービスが対象)
- 減算を受けない条件は4要件(委員会・指針・研修・担当者)をすべて講じることです
- 訪問看護には経過措置がありません(経過措置があるのは福祉用具貸与のみ)
- 4要件を無理なく回す年間サイクルの組み方と、残すべき記録
減算の適用条件と減算幅
令和6年度介護報酬改定で、利用者の人権の擁護、虐待の防止等を推進する観点から、全ての介護サービス事業者(居宅療養管理指導・特定福祉用具販売を除く)を対象に新設されました。厚生労働省の改定資料では、虐待の発生又はその再発を防止するための以下の措置が講じられていない場合に、所定単位数の100分の1に相当する単位数を減算するとされています。
- 虐待の防止のための対策を検討する委員会(テレビ電話装置等の活用可能)を定期的に開催するとともに、その結果について従業者に周知徹底を図ること
- 虐待の防止のための指針を整備すること
- 従業者に対し、虐待の防止のための研修を定期的に実施すること
- 上記措置を適切に実施するための担当者を置くこと
福祉用具貸与にはサービス提供の態様を踏まえた3年間の経過措置が設けられましたが、訪問看護に経過措置はありません。4要件のどれかが欠けた状態は、そのまま減算リスクです。
4要件は「1つの体制」として作る
4要件をバラバラの宿題と捉えると重く見えますが、実体は1つの体制です。
- 担当者を決める(要件4)。解釈通知では、虐待防止検討委員会の責任者と同一の従業者が務めることが望ましいとされています。感染対策担当者など他の担当との兼務も、職務に支障がなければ差し支えないとされています
- 担当者が事務局になって委員会を開く(要件1)。テレビ電話装置等の活用が認められているので、訪問の合間に全員を集められないステーションでもオンラインで成立させられます
- 委員会での検討結果を反映して指針を整備・見直しする(要件2)
- 指針にもとづいて研修を実施する(要件3)
つまり「担当者を決める→委員会を開く→指針を直す→研修をする」という一本の流れです。小規模ステーションでも、管理者が担当者を兼ね、ミーティングの枠を委員会にあてる形で現実的に回せます(兼務や開催形式の可否は、指定権者の運用も確認してください)。
なお、解釈通知は虐待防止の観点として未然防止・早期発見・迅速かつ適切な対応の3つを挙げています。訪問看護は利用者の居宅に入る職種であり、家族等による虐待やセルフ・ネグレクトに気づきやすい立場です。指針と研修には、「自ステーションの職員による虐待を防ぐ」だけでなく、「発見したときに市町村の窓口へつなぐ手順」まで含めておくと、この3観点をカバーできます。
減算を受けない年間の回し方
「定期的に開催」「定期的に実施」の具体的な頻度は、解釈通知と指定権者の運用で確認してください。そのうえで、実務としては年度はじめに年間カレンダーへ固定してしまうのが確実です。組み方の例を示します。
- 年度初め: 担当者の選任(変更)を確認し、委員会を開催。前年度の振り返りと指針の見直しを議題にする
- 年度前半: 全従業者向けの虐待防止研修を実施。新規採用者には採用時に個別に実施する
- 年度後半: 委員会をもう1回開催し、ヒヤリとした事例・気づきの共有と、研修内容の見直しを行う
- 通年: 委員会の結果を欠席者含む全従業者に周知した記録(回覧・チャット配信の記録など)を残す
これはあくまで組み方の一例です。ポイントは、委員会・研修を単発のイベントにせず、開催→周知→指針反映→研修のループとして予定表に載せてしまうことにあります。
残す記録はこの4点
実地指導で「措置を講じている」ことを示すのは記録です。
- 委員会の議事録(開催日・出席者・議題・検討結果、オンライン開催ならその旨)
- 周知の記録(議事録を全従業者に共有した日付と方法)
- 指針(策定日・改訂日入り。委員会の検討結果が反映されていること)
- 研修の記録(実施日・参加者・使用資料。新規採用者への実施記録も)
同じ改定で新設された業務継続計画未策定減算も、「計画・研修・記録」という同じ型の体制系減算です。整備を始めるなら、BCP未策定減算の記事とあわせて同じ年間カレンダーに載せてしまうことをおすすめします。
まず確認したいこと
- 虐待防止の担当者が明文で決まっているか(兼務の場合、職務に支障がない整理になっているか)
- 委員会を定期的に開催し、議事録が残っているか
- 委員会の結果を全従業者に周知した記録があるか
- 虐待防止の指針があり、見直し履歴が残っているか
- 研修を定期的に実施し、参加記録が残っているか(新規採用者への実施を含む)
- 発見時に市町村の窓口へ通報する手順が指針・研修に入っているか
- 委員会・研修の頻度の取り扱いを、指定権者の案内で確認したか
出典
| 資料 | 発信元 | 文書・掲載日 | 確認日 |
|---|---|---|---|
| 令和6年度介護報酬改定における改定事項について | 厚生労働省老健局 | 令和6年度介護報酬改定資料 | 2026-08-14 |
| 指定居宅サービス等及び指定介護予防サービス等に関する基準について(解釈通知・改正後全文) | 厚生労働省 | 令和6年度介護報酬改定関連通知 | 2026-08-14 |
| 令和6年度介護報酬改定について(告示・通知掲載ページ) | 厚生労働省 | — | 2026-08-14 |
※減算幅・要件は上記時点の情報です。実際の適用判断・頻度の取り扱いは告示・解釈通知と、指定権者(都道府県・市町村)の案内が優先します。個別の判断は指定権者にご確認ください。
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執筆
クラシテク編集部
訪問看護の制度・加算・現場実務について、厚生労働省および地方厚生(支)局の一次資料にもとづいて解説しています。記事内の数値・要件は掲載時点のものです。個別の適用判断は管轄の地方厚生(支)局にご確認ください。
